基礎体温

思索の試作。詩作の施策。

インプットという病

この5年間くらいで一番自分の日常を変えた持ち物は、iPhoneだと思う。これによって暮らしのあらゆることが変化してしまった。とりわけ大きいのは、いわゆるスキマ時間の使い方が変わったことである。

 

通勤電車でも見るし、トイレの中でも見るし、自転車で移動するときも何か聴いているし、夜、布団の中で寝るまでの間も何かしら聴いている。エレベーターを待つちょっとした時間でも、メールかニュースあたりを拾って見ている。

 

職業柄、情報収集に余念がないのはいいことだし、無駄な時間を有効に使っているとも思えるのだが、立ち止まってひとりで瞑想することがすっかりなくなっていることに気がついた。日常生活を振り返ってみると、そんな時間はお風呂の中くらいになってしまった。(iPhoneは幸いなことに防水ではない)

 

ひとりで何を考えていたのかというと、それこそろくでもないことばかりだったとは思うが、iPhoneを手に入れる前は、もっと思索に耽る時間が多かった。(iPhone以前はガラケーを持っていたが、比較にならないほど用途が限られていた)

 

これは、家の中でとりあえずテレビをつけることにも似ている。以前は見たい番組だけみて後はスイッチを切っていたのだが、あるときから一人暮らしになって、さびしさをまぎらわすためか、なんとなくテレビをつける癖がついてしまった。

 

 

私は子どものころ、とても寝つきが悪かったので、布団に入ってからなかなか眠ることができず、仕方ないからいろんなことを考え、いつの間にかマンガのストーリーのようなものまでぼんやり考えるようになっていた。あの眠れない夜に考えたこと、移動する自転車の上で考えたこと、そんなことが自分の思考の一部を形づくっているような気がする。

 

スキマ時間を恐れず、何かインプットしなければという強迫観念にもとらわれず、目を上げ、まわりの景色を眺め、つまらないことでもいいから自分の頭で考える習慣を取り戻そうと思う。